御堂筋税理士法人創業者ブログ

最近、日本文学・日本思想の読書に

はまっている小生だが、

なんといっても、大きなハードルは

『源氏物語』と『古事記』。

 

前者は長大、後者は難解

というのがその理由だ。

 

前者は、近いうちにと思っているが

後者は、手をつけた。

 

古事記は、

稗田阿礼という人が

口述伝承していたものを

太安萬侶という人が

漢文形式で記録したものだ。

 

その解読はまことに難解で

大げさにいえば

エジプトのヒエログリフ

みたいなものだ。

 

(ちんぷんかんぷんで読む気がしない)

 

この埋もれていた?

わが大和民族の『創世記』を

なんとか、読めるようにしたのが

伊勢、松坂の大人(うし)

本居宣長である。

 

古事記を読むハードルの高さは

彼が著した大著

『古事記伝』の分量でもわかる。

!なんと全40巻!

 

(アマゾンでかき集めた古事記伝

 当然ながら未着手)

 

しかしエベレストに挑む前に

その導きとして

本居宣長が記した小著がある。

『直毘霊(なおびのみたま)』である。

 

本居宣長は

江戸中後期の人で、

僧契沖と賀茂真淵に啓発され

日本の古典の解読と

その本質の解明にいどみ、

そこから

日本と日本人のユニークさは

どこにあるのかを明らかにした

知の巨人である。

(そのすごさは、

引用している文献の

膨大な範囲を見れば歴然である)

 

簡単にいえば、

日本人よ!

中国かぶれを脱して

日本精神をしっかりと見つめよ、

ということであった。

 

「唐心を排して倭心を尊ぶ」のである。

こうした学問の領域を国学という。

 

これが明治以降

第二次世界大戦にかけて

バカ者どもをして

日本をとんでもない方向に導いた。

ものすごい効き目があるが

副作用もきつい

薬みたいなものである。

その辺、

心得て拝読しなければならぬ。

 

なぜなら、

どの民族にも創世の神話はあり

民族の性質のゆかしさはあると

仮定してしかるべきだからである。

 

その日本人の

ユニークさとは何なのか?

古事記に書かれた伝承から

私たちはなにを読み取ればよいのか?

これが古事記を読む醍醐味だろう。

 

と、あれこれアマゾンなどを

サーチしていたら

『新釈古事記伝』という

誠に触手の動く本に出くわした。

 

(致知出版社刊、新釈古事記伝

 にくい書籍化である)

 

この本、明治時代初期、

切れ者の法律学者で

晩年にはエキセントリックな

国体観に走った筧克彦の講義に

魂を奪われた阿部國治という方が

教えていた古事記の心を

さらにその神髄者であった

栗山要という方が編纂し

復刻したものだ。

 

その内容は

実にやわらかでわかりやすく

懇切丁寧。

 

私のような無知蒙昧な人間に

先人方が、解き明かし

精錬してきた神話の意義を

教えてくださる。

 

多少、うぬ?と思うことも

ないではないが

しかし、人間が生きる上で

肝要極まりない姿勢を

深く教えてくださる。

 

森信三先生の

『終身教授録』を補う

すばらしい本だと思った。

 

古事記は、日本書紀と同じように

神代七代の日本創生記から

神武天皇の日本への降臨と

推古天皇までの歴代天皇の事跡

を記したものである。

 

だが、何といっても

魅了されるのは

創世記のところである。

内容を略記すると次のとおりとなる。

 

創世の神から説き起こし

イザナキ、イザナミの二神による

淡路島、四国、隠岐、九州、

壱岐、対馬、佐渡、畿内の

大八十島、つまり日本国土

の生み落としと、

それに続く神々の誕生。

 

イザナミの

黄泉(よみ)の国への旅立ちと

イザナキによる

アマテラス、スサノヲ、

ツキヨミノミコトの三柱の誕生。

 

大国主(おおくにぬし)の命と

少彦名(すくなひこな)の神の

国造りを経て、

 

アマテラスの孫、ニニギノコトが

高天原から地上へ天下り

(天孫降臨)、

 

その子である山幸彦が

海つ神(ワタツミ)との間に産んだ

ウガヤフキアエズノミコトの子

カムヤマトイハレビコノミコト

=神武天皇が

日向の国から東征し

大和を征するのである。

 

ここにおいて

遂に神から天皇への現実化、

歴史の具体化が

なしとげられるのである。

 

日本の国の創生が

生き生きと、立体的に、

意義深く物語られる。

すばらしい叙事詩である。

 

(岩波文庫版『古事記』)

 

さてこの神話から、阿部先生は

・大国主の命の袋背負いの心

・少彦名の神の名を表さぬ役立ちの心

・すさのおの苦難の遍歴を通じた魂の成長

 和と理念重視の大和民族が

 原則とすべきこころ

の三つをとりあげて

そこに込められた

わが民族を作り出した

遠い先祖、皇祖の教えを

ときにそこまで意訳するのと思うほど

じつにやさしく説いてくださる。

 

さて、前置きが長くなったが

わたしが教えていただいた

古事記にある民族のこころを

<
p>皆さんにもご紹介しておきたい。

 

まず、大国主の命の事跡である。

(この後、大黒様と呼ぶ)

 

大黒様はすさのおの命の子孫であるから

直系の神様である。

そして、日本の国造りの基礎をなした。

 

その事跡は、

いなばの白うさぎの寓話による

やさしいキャラの描写から

 

兄弟である八十神たちからの

数々の暗殺の謀略に耐え抜き、

その反抗を協力に変えるような

魂の召命を受け、回心を成し遂げた。

そこに、私たちはどのような

教訓を学ぶべきかが焦点である。

 

大黒様は、

国造りのために兄弟たちと

出雲の国に旅だった。

 

兄弟たちの旅行用具、

国造りの道具など一切合切を

背負わされ、ずだぶくろに詰め、

彼らの後ろからついていった。

 

つまり、サーバントなのである。

そして文句も言わない彼は

出雲一の美人のお姫さまから

ぶおとこであるにも関わらず

お婿さんに指名される。

 

腹の虫が収まらない兄弟たちから

とんでもない命令を受け

暗殺されそうになる。

ここらの試練の連続が

「あかいだき」である。

 

また、舅からのテストで

へびやむかでで

溢れかえった部屋に寝かされ

彼らを従えさせる課題を

与えられたりする。

 

その都度、彼は

周囲の助けで危機を乗り越える。

ここらへんの教訓が

「袋背負いの心」である。

 

さすがに疲れた大黒様が

天照大御神さまに相談すると

根の国(つまり冥界)におもむき、

すさのおの教えを受けるようにと

指示される。

 

冥界ですさのおに課題を与えられた

大黒様は、娘さんのお姫様に助けられ

無事課題をなしとげ、免許皆伝

おまけにお姫様に慕われ、

共に現世に帰ってきた。

 

そうなると、現妻と新妻の間の

問題をどう解決するかが問われる。

これが「うきゆい(盞結)」である。

ここに原始社会の一夫多妻制から

一夫一婦制への移行の煩悶が

見て取れるというのである。

 

夫婦の愛は、物心一如の愛、

霊肉一致が原則であると書かれる。

そのとおりである。

 

さて、では「袋背負いの心」とは

どのような心持ちなのか?

 

リーダーたるものは

できるだけ多くの他人の苦労を

背負い込むことを喜びとする

ということ、つまり

サーバント・リーダーシップなのである。

そううけたまわった。

 

経営コンサルティングと

会計事務所の統合

 

組織デザイン研究所&

御堂筋税理士法人

 

小笠原 でした。


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