御堂筋税理士法人創業者ブログ

皆さんおはようございます。今日は情報の提供です。

 一倉定さんといえば、昭和の伝説的経営コンサルタントです。そして、私の経営計画の考え方の源流にある人です。また一倉さんの考え方は、ドラッカー理論に忠実で、その中小企業への展開のよき事例です。今回、税理士さん向けの経営コンサルタント大学での講義に当たって、レジュメをまとめるために再読しました。

 感じたことは、やはり一倉さんの考え方が私が日ごろ言っていることのベースになっているということの再確認と、忘れていることや新たに気づかされることがあったということです。

 そして、さらに、これをいくつかのお客様での指導や幹部教育で活用できるのではないか、またわが社の次世代の経営者の育成のための経営計画の進め方に盛り込めるのではないかと思いました。いつも思うのですが、近々予定している取組みでの大いなるヒントに出あえました。世に、”セレンディピティの法則”ということが言われますが、まさにそうですね。思っていると不思議に有益な情報に出あいます。

 さて、下手なお話はこれくらいにして、以下、例によっての私の要約です。

まとめ
1 事業の任務は経済的価値の創造である。同時に雇用の創造である。
  「企業は社会の公器である」と言われている理由はここにある。
2 企業の成果は、市場-お客様から得られるのであって、企業内にはない。
3 事業繁栄の基本的要件は、高収益型事業構造を創りあげることである。
  その事業構造は、安全性と収益性を効率よく実現するものでなくてはならない。
4 市場とお客様の要求は絶えず変化する。その変化を捉えて、これに対応するためには、
  社長は常にお客様のところへ行って、自らの目と鼻と肌で、その変化を捉えなければならない。
5 経営計画なくして正しい経営はない。
経営計画こそ社長がわが社を理解し、リーダーシップを発揮するために絶対に必要なものだからである。

1 わが社の事業を創る
(1) 経営戦略 高収益型事業構造 自然にそうなるような構造を創る
 「敵を見ずして敵を制するを戦略という」(孫子)
  内容 1 どんな市場または市場の組合せ
     2 どんな製品構成、どんなグレード
3 どんな得意先構成
4 どんな店舗展開
5 どんな供給体勢(内外作区分、仕入体勢)
6 未来事業の推進体勢
7 人員構成
  教訓 1 内部管理の手法が経営学ではない
     2 危険な事業構造は何かをまず知りこれを改める
(2) 製品の品質は顧客の要求に合っているか
  →売上年計、得意先別売上高ABC分析、製品別売上高ABC分析
  教訓 1 コスト主義は顧客の要求が忘れられる危険が大
     2 新製品は市場においての実験が大切。成功の是非は、顧客が決めるからだ
(3) 製品構成をどうするか
 教訓 1 製品構成こそ、会社の収益性と安全性を確保する基本である
    2 社長はわが社の製品構成の欠陥を認識し、これに対して明確な方針を持たなければならない
(4) 得意先構成をどのようにするか
 得意先別ABC分析
95%で切る、残り5%に対する方針を明確にする→停止、現金化、引取り、開設しない
教訓 1 得意先と販売網の分析こそ大切、成果をあげるための数々の情報がそこから得られる
    2 顧客開発は社長の役割である
 社員の姿勢が変る 会社は社長次第でどうにでもなる、社長の認識が大事
 わが社の未来像を持つ 方針の確立
 わが社の事業を創る 本シリーズは、社長は何をしなければならないかという課題への総合解明

2 経済的価値の創造原理
(1) 企業の任務は経済的価値の創造である
 教訓 1 企業が経済的価値の創造という本来の任務を果たすためには、
営々たる努力によって長期繁栄を実現しなければならない
     2 客観情勢の変化に対する企業の正しい姿勢と対応こそ肝要
(2) 内部管理からの脱出
 微細的目標管理、原価計算(全部原価)、固定的組織論、時系列データの不在→自社中心主義
(3) 環境整備なくして事業なし
(4) 倒産企業の教訓
  業績不振の会社は見ただけで判る
 1 環境整備ができていない
 2 事務所の建物が身分不相応で立派で広く、事務員が大勢いる
 3 事務所の机の配列が学校式→内部管理思考、形式主義の誤ったマネジメント病
 4 張り紙が多く、その多くは社員の姿勢や心得についてのもの
 5 ハヤリものの精神運動をやっている
(5) 社長が認識すべきこと
 1 お客様あっての会社である
 2 お客様の要求を満たすことによって、初めて経済的成果を手に入れることができる

(6) 経済的価値の創造原理
 1 怠慢追放 → 社長のやるべきこと、① 決定、② 顧客訪問、③ 数字を見る
2 成果はお客様から得られる
3 スクラップ・アンド・ビルド
4 集中 → お客様の要求の特定の部分に限定し、その中でお客様の多様な要求を満たす
5 動機づけ → もっとも大事なのは社長自身の動機づけ
  経営計画ほど強い動機づけはない→経営計画発表会によって全社員が動機づけられた
→ 社長のリーダーシップによって全社員が変っていく

3 わが社の現状分析から収益向上の道をみつけだす
(1) 市場の地位はどうか → 業界での占有率、ランク
 シェア分析の重要性 → 限界生産者の危険性
 不況時の影響、顧客心理
 企業の危険度は、企業規模の二乗に逆比例する
 会社の規模⇄企業の規模 業界が過大→シェア確保困難、業界が過小→占有率過大で危険
 主要顧客のその業界における占有率→優良顧客と付き合え
(2) 年計はどうなっているか 傾向を正しくつかむには年計がよい
 何年も連続して取っていく → 長期的傾向、景気変動が判る
 景気の転換点が判るようになる(変化点の察知)→必要な手を打つ
(3) 生産性はどうか
付加価値÷総費用(固定費)と分子、分母の長期傾向を掴む
 部門の解析には場合は、部門の付加価値÷部門人件費 → 3以上必要
 その他、固定資産、棚卸資産についての付加価値生産性も有意味
  ↓
 向上策 ① 分子↑、② 分母↓だが、①が重要
販売に対する生産性(配送も)は、高すぎても低すぎてもいけない
 最大要因は事業構造 → 市場、顧客、販売網、製品、供給体勢、人的構成、財務など
 成果の中心は製品 → 製品分析が重要
(4) 製品の収益性と将来性はどうか(本項はドラッカーの『創造する経営者』の分析法)
 分類法 → 昨日の製品、今日の製品、明日の製品、不必要な特殊品、経営者の我の申し子、シンデレラ
 分析と考察
 1 売上高
 2 売上高の傾向
 3 収益性
 4 企業のそれぞれの製品に対する一般的な態度
 5 成果を高める態度
  ※ コンサルティングで、最も難しく、最も急ぐことは「捨て去る」ことを納得させること
  社長は、会社の収益源であると同時に損失源でもある得意先に対して常に注意を払っておくこと
  1 どのような業界か
  2 占有率またはランクはどれくらいか
3 収益性と将来性はどうか
  有報、TDB信用調査報告書で調べ、傾向を見ておく + トップ訪問と対談
  95%の原理に従え(ドラッカーの企業の現実仮説 成果と活動のアンバランス)
  顧客ABC分析表の作成(記入要領を入れる)
  ポイント 載せる得意先、製品は0も含め全部である(細分化されていれば別勘定)
検討のポイント
  1 1社、1製品で、総売上に対する比率が高すぎれば危険(最大30%だが、10%以下がよい)
2 下位5%の部分は、得意先数、製品数では50%を占めるのがふつう→切りすてる方針をもつ
     方針→訪問しない、値引しない、配送しない、掛売をやめる
3 上記2の内有望なものは注力すべく、例えばRなど別格付を行なう→だから全点を挙げる
4 上位に対してはご迷惑事項を検討し、在庫増大などCSアップの策を立てる
  5 製品別売上高ABC分析表は、顧客が流通また小売店の場合には、売れ筋情報として喜ばれる
  6 メーカーの場合、これをもって小売店を回り陳列を見ると、売れ筋品切れ、死筋陳列を発見する
  本表を使った分析と対策の事例は本文を読むこと

4 集中(重点指向)の原理による特色化をはかる
製品の品種を絞り、その中で品目を多様化する
集中の原理 市場のすべての要求を満たそうとすると、市場のすべての要求を満たせなくなる。
 高級品に絞って企業イメージを高める → 市場が小さいがゆえに中小企業向けである
 客層を絞る → 顧客が望むのは、すべての品が揃っていることではなく、買いたいものが豊富にあること

5 外部情勢の変化に対応する安全性の確保をはかる
(1) 業界の組合せはよいか 多角化とは住みつく業界を多角化することである。
(2) 得意先の組合せはよいか オンリーの危険
(3) 製品の組合せはよいか 成功し過ぎた危険、パテントの危険
(4) 内外作区分はよいか
  戦略的意味 → ① 収益性向上、② 季節変動等対応の順応性
  内外作比率の基準 1:5(最低でも1:2)
  設備投資のリスク
1 資金、償却費、維持費の増加、人件費など固定費増加による損益分岐点の上昇
2 設備資金の返済による資金繰りの圧迫
3 変化に対応する機動力と弾力性の喪失(これが最も重大)

6 戦略条件を強化する
(1) 戦略条件と強化する
  特化から総合化へ
  地域的な行き詰まりを土台として
(2) 戦略なき戦略
 知恵と努力という戦略 お客様の立場になって考え、これを事業に導入するのが基本
  死にもの狂いという戦略 顧客に訊く→アイデア→街に出て観察・研究
(3) 事業構造を充実する
 わが社の強みを生かし、弱みをカバーするスクラップ&ビルド
  1 わが社の現状分析から必要な基礎固めをする
 2 まず、製品と市場を限定して、その中で占有率を高めていく
  3 次に、新しい製品と市場を開発して事業の複合を行ない、さらに総合化を行なう
  4 事業全体を見直してスクラップ&ビルドを行なうことにより、市場に確固たる地位を築いていく
(4) 昨日の敵を今日の友とする
(5) 商品価格と規模に合わせる 水たまりにおいしい魚が居る
(6) 供給能力を整備する

7 不況期の戦略
(1) 供給能力の増大を実現する 家を建てるのは不景気の時がよい
(2) 過当競争緩和の手を打つ 価格破壊者に高い値段で外注する
(3) 支払手形を減少させる 仕入価格低減と財務安全性向上
  方法 裾切り法 一定以下のものを順次現金支払化する

8 わが社の事業を定義づける
(1) 事業の定義づけの意義
  事業の本質が明確になり、ためにサービスの質が向上し、幅が広く、深みを増す。また選択と集中が増す。
(2) 自分で値段をきめられる事業にしたい
  1 元請化、直売化
  2 地味なセグメントを狙う
3 非営利組織向け
  4 メンテナンス分野
  5 富裕層向け

9 わが社の事業を考える
(1) 社長が外に出る 『穴熊社長』からの脱却 自分中心主義(能率主義)→顧客中心主義への転換
(2) わが社の安全性を忘れて オンリー、ダボハゼ、販売網頼み
(3) わが社の収益を確保する 選択、納期厳守による信用、高級品
 製品こそ事業経営の柱 社長のもっとも重要な決定
→ 社長自らわが社の製品群の一つひとつを市場原理に基づき将来性、収益性をよく調べ、取捨選択していく。
(4) スクラップ&ビルドの重要性
本業重視、新事業は最初は実験的に→手ごたえあれば拡張
そのためには社長の外部情報収集は重要

10 事業繁栄の道
(1) 社長の最初の仕事
  顧客訪問、市場調査 → 市場実態調査報告のまとめ
   ↓
  そこから…一倉流の経営計画書につながる
  1 基本理念
  2 基本方針
   販売、生産、技術開発、財務…
  3 商品に関する方針
  4 販促に関する方針
  5 顧客に対する方針
  6 内部体勢の整備
(2) 会社の自然の成り行きは倒産 エントロピーの原理である
 経営計画は、会社の設計図であり工程図である。
 社長がそれを作ることで事業の全体像が判り、なすべきことが判る。
 社長のリーダーシップが重要 → 自らの意図を社内外に明らかにする

以上

会計事務所と経営コンサルティングの融合

御堂筋税理士法人&組織デザイン研究所

小笠原でした。

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